言葉

 わたしは、人との関わりにおいて、言葉が重要なものであると思っていた。

 わたしと相手との関係性だって言葉で表したかった。恋心を持っている人との間でだけ。今思えばそれ以外の人たちは特段関係性を確かめることはなかった。そう考えるとすこしだけ、おかしいようにも思えた。言葉で表せない関係や気持ちもあるんじゃないか。すこしも気持ちがないのに好奇心、興味本位で自分に近づいてくる人はきもちわるく思えた。

 わたしが高校生の時に付き合っていた彼は0か100かで物事を考える人だった。彼の望む関係性を築けないなと感じたときに、別れを告げると、彼は「嫌いになったの?」と問うた。恋人としての感情を持って接することができないだけであって、私は彼のことは嫌いじゃなかった。でも、彼には伝わらなかった。

 わたしが今、すきな彼は関係性を言葉にすることを拒む。会えばあたたかい眼差しを向けてくれるし、わたしを思った行動をしてくれる。逢瀬は幾度となく重ねているし、気持ちも通っているとばかり思ってしまう。会えなくなってしまうならこのままでいいのだろうか、と薄っすら思ってしまう。

 言葉の壁、言葉の認識、言葉にできないきもち。言葉がきらいになりそうだ。

 彼のことは忘れられないからしんだことにしてしまおうか。